ポップなコンタクトレンズ
線維柱帯とシュレムは「房水の排出システム」とでも言うべき役割を果たしています。
線維柱帯は、眼の中の「生きたフィルター」でガーゼを何枚も重ねたような構造をしています。
このフィルターが、毛様筋の緊張で引き延ばされると目が粗くなり、水が通りやすくなります。
また、シュレム氏管は強膜の中に埋め込まれた「下水管」ですが、これは、毛様筋の緊張で変形されて管の断面積が大きくなります。
つまり、フィルターは本が通過しやすく、下水管はより多くの水を流しやすくなるように形が変わることになります。
ということは、近くを見たときには、「房水排出システムの機能がアップする」ことになります。
実際に、近くを見続けると房水がより多く排出されるために眼圧が下がる(眼が柔らかくなる)ことが知られています。
さて、ここまでのポイントを整理してみましょう。
50m先(もちろん3m先でも構いません)から目の前20mの位置に視線を移したときには、眼の中には次の二つの変化が起こります。
逆瞳孔ブロックによって、前房内の水圧が高くなる。
房水排出システムの機能がアップして、房水は前房からシュレム氏管へ流れやすくなる。
どちらもすでに知られている事実です。
そして、この両者を合わせて「近くを見たときに、房水は水晶体によって押されて、前房からシュレム氏管へと押し出される」、と考えることにはとんと無理な点はないと思います。
こんどは、逆の場合を考えてみましょう。
近くから遠くに視線を移した場合です。
このときは、突出していた水晶体の前面が引っ込むため、逆瞳孔ブロックが解除される。
前房が元の形に戻る。
引っ張られて変形していた線維柱帯とシュレム氏管が元に戻る。
という変化が起こります。
注目すべきは、「前房が元の形仁戻る」という点です。
近くを見たときに房水の一部がシユレム氏管に押し出されたはずですから「もとの形」に戻るためには出ていった水と同じ量が、どこからか並房に入って来なくてはなりません。
可能性として次の二つのルートが考えられます。
シュレム氏管から前房に逆流する。
後房から瞳孔を通って前房に入る。
しかし、前にも書きましたが、シユレム氏管と前房の間にある線維柱帯というフィルターは、逆流防止機能を持っている胞ため、シュレム氏管から並房には逆流しません。
したがって、前房仁房本が入るルートは「2」だけとなります。
つまり、遠くを見たときには房水は後房から前房へと移動するものと考えられます。
ここまでは、近くを見たときと遠くを見たときの房水の流れを検討してきました。
ここで整理して見ましょう。
近くを見たときには、房水は前房からシュレム氏管へ押し出される。
遠くを見たときには、房水は後房から前房へ移動する。
これらのことから、遠くを見たり近くを見たりすることで房本は後房から並房、前房からシュレム氏管へと積極的に移動させられている姿が想像されます。
その原動力となっているのは水晶体と線維柱帯で、前者はポンプのように、後者は弁のように働きます。
そして、この両者を同時に動かしているのが毛様体の中にある毛様筋というわけです。
ところが、毛様体にはもう一つ、房水を作り出すという重要な役目がありました。
つまり、毛様体は房本を作って、なおかつそれを動かすわけで、いわば「房水の管理者」としての役割も果たしているように思えます。
さて長い道のりでしたがようやく私の仮説にたどりつくことができました。
ここまでをまとめますと「毛様体は房水を作り出す一方で、水晶体と線維柱帯を動かして房水の流れを促している可能性がある。
」ということになります。
これが私の一番目の仮説です。
ここで再び話を前にさかのぼって整理してみます。
私の言いたかったことは、眼の中に「動き」があるかないかが若者の眼と老人の眼の決定的な差に違いない。
「動き」のある眼とない眼とでは、眼の中になんらかの環境の違いがあるはずである。
それは「房水の流れ」の違いだと思われる。
そしてこのあと私の言いたいことは房水がよく流れている眼の方が、そうでない眼に比べて健康ではないだろうか?5.房水がよく流れるように、眼の中の動きを維持できれば眼の若さも保てるのではないだろうか?という二点です。
それでは、房水の果たしている役割について見ましょう。
房水の役割とは、私たちの体は細胞と、細胞から作られた物質によって構成されています。
その細胞が健康に生きていくためには栄養やミネラル、酸素などの「生活必需品」の配給と、二酸化炭素やアンモニアなどの「老廃物」のすみやかな撤去が不可欠です。
その両方を担当するのが血液で、そのために生きた細胞のあるところには血管があるわけです。
しかし眼の中には血管をまったく持たない組織があります。
それは角膜、水晶体、硝子体、線維柱帯の四者です。
もちろん、それぞれに生きた細胞がありますので物資の搬送や不用品の回収が必要で、それを血液に代わって行うのが房水です呻。
房水は血液を原料にして毛様体で作られます。
さきほどの血管を持たない四つの組織のうち、角膜はその表面をたえず涙がおおっているために、物質のやりとりを涙との間で行うことができます。
また同様に、硝子体は網膜と接触しており、それとの間で物質の交換ができます。
したがって、全面的に房水に生活を依存しているのは水晶体と線維柱帯ということになります。
前にも書きましたが、水晶体は「生きたレンズ」で干不ルギーを使って透明性を維持しています。
また、線維柱帯は「生きたフィルター」でそこに詰まったゴミを自分で「食べて」取り除く「自浄作用」を持っています。
どちらも健康的に生活するためには二房水との間の物質交換がとても重要で、彼らにとって房水は「いのち綱」といってもいいくらいです。
したがって、この「いのち綱」に何か異常が起これば、水晶体と線維柱帯にはなんらかの影響が出てきます。
房水に変化が起きると水晶体は、多くのエネルギーをその透明性の維持に使っています。
したがって、何か変調が起きると透明性を維持できなくなり、白内障という目に見える形で眼科医に教えてくれます。
一方、線維柱帯は「フィルター機能の異常」という形で変調をアピールします。
フィルター機能に異常が起これば房水が通りにくくなって眼圧が高くなります。
つまり、水晶体の変調は白内障として、線維柱帯の変調は緑内障として現れます。
これらの変調は房水の変化によって引き起こされることがしばしばあります。
房水の変化には「質の変化」と「量の変化」があります。
質の変化は糖尿病やぶどう膜炎などで生じ、その際に、高率に白内障(併発白内障、糖尿病性白内障)や緑内障が発症します。
また、ある種の病気の治療のために「副腎皮質ホルモン剤」という薬を内服したり目薬として使用したりすることがありますが、この薬は房水に入り、人によっては白内障や緑内障が起きることがよく知られています。
一方、「量の変化」では何か起きるでしょうか。
私か予測しているのは「房水の流れが悪くなると白内障や緑内障が起きる」のではないかということです。
しかし、残念なことにこちらはまだ良く分かっていません。
それは、実際の眼で「他には悪いところがないのに、房水の量だけが明らかに減る」ということがないからです。
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